僕なりの目線で切り取ったイメージショットです。プロの建築カメラマンによる写真は後日公開されます。
敷地は谷合いに位置し、緑あふれる里の風景の中にある。
周囲の山々は自然のありのままの姿を成し、
自然の美しさと荒さを同時に感じる場所であった。
まず、南に緩やかに下がる地形に沿うように、
軒の深い大屋根を架けたシンプルな外観とした。
建築が主張することのなく、
大らかな風景に溶け込んでいくことを目指した。
クライアントはモノを大切にし、
アンティークを愛する感性を持つ。
ブルーグレーの外壁、ザラつきの床材、合板仕上の天井など、
ある種の「荒さ」やできた瞬間から懐かしさを感じるような
仕上げにより、アンティークとの調和を図った。
この敷地とクライアントの特性をデザインに昇華する工夫の一つとして、
デッキへと出られる掃き出し窓前には、あえて小上がりの段差を付けた。
この段差はある時はクライアントの愛するモノたちの設えの棚、
物入れとして居場所となる。
ある時には集う人の腰掛や小さなお子さんの勉強机(遊び台)ともなり得る。
このように「段差」が特定の用途を持たないからこそ、
多様な用途がうまれ、暮らしを支える装置となっている。
LDKは野放しに開放的につくるのではなく、
自然との程よい距離を測りたい。
段差によりデッキから一段下がることにより、
大開口で外部と対峙しながらも、
どこか穴倉のような安心感が生まれればと考えた。
住まい手と敷地の声を素直に聴くことの大切さ。
住まい手と敷地に似合う家こそ、
最も大切なことなのかもしれない。