元々、田であった土地に建てられた農家住宅である。5人家族の住まいではあるが、コストを抑えつつも、建主の要望であった薪ストーブを取り入れた素材感のある住宅にするため、広い土地にも関わらず、思い切って小さな家を計画した。
リビングに面して個室が3つ並び、廊下のない空間とし、面積を押さえながら親子のコミュニケーションが生まれやすい間取りとした。キッチン・洗面所・玄関・勝手口は回遊動線とし、生活の裏方をサポートし、主寝室はプライバシーを保ちやすい配置となっている。
外観においては、南側の軒の出を1350mmとし、通常スタッドを更に切り詰め建物の高さを押さえることで、水平方向の伸びやかさを持たせつつ、控えめで周りの田園風景に溶け込むように心がけた。LDKから繋がる植栽に囲まれた広いデッキは内と外の中間領域として作用する。深い軒の出が季節に応じた日射や光環境を内部空間にもたらすと共に、数値が示す面積以上の広がりを感じさせることができた。
外壁はこの地域で古くからよく用いられている焼杉板貼りとした。新築から数か月を経て、既に焼杉板の経年変化が少しずつ始まっている。まだまだ真新しい外壁が時と共に周囲に馴染んだ風合いになっていくことを期待している。