海外生活を長く続けていた60代のご夫妻は、日本に戻る前に住んでいた地中海を望む場所のような土地を探し、終の住処となる家を計画した。周囲に田畑が広がる郊外、遠くに海を眺めるなだらかな斜面。手持ちのさまざまな家具を置きたいという要望を踏まえ、この立地を活かし、周囲の景観に馴染みながら眺めを取り込む建築を目指した。
室内は暮らしを受けとめる、白磁の器のイメージとし、ニュートラルな状態をつくることを第一にした。壁や天井に取り付けるものを最小限に抑え、楚々とした空間をしつらえた。このクライアントであれば、その暮らし方でもって、きっと空間を美しく彩ってくれるであろうと全幅の信頼を置いて。
LDKの海側一面の大開口により、室内と景色がまるで一体となったような空間。そこにはゆったりとした穏やかな時間が流れている。