敷地の北側には一級河川の土手が広がる。この敷地に、キャンプ、釣り、自転車、庭いじりなど、アウトドア好きのご夫婦と犬一匹が暮らす家を計画した。
北側に広がる土手と桜並木が一望できる環境を活かすため、建物はあえて北向き配置とし、庭を北側に設けた。庭は芝生敷とし、眺める庭ではなく、寝ころべる庭、草木が身近に感じられる庭とした。
庭から続く玄関土間は大きな開口を設けることで、庭の草木を眺めながら過ごすことのできる土間リビングとしての利用も想定している。
主寝室や水廻りなどプライベートな空間は庭に面した1階に、LDKは土手と桜並木の眺望を確保するために2階に配置した。
2階の窓からは北窓ならではの柔らかな順光の景色が広がる。南向きの家が日本の家づくりの主流であるなか、クライアントには北向きならではの良さとこの土地との相性を説き、素直に受け入れてくださった。
リビングに続くインナーバルコニーからは、目の前の土手や木々、朝日が昇り、夕日が沈む様子を臨む。外部空間でありながらも、自分たちだけの籠るような空間を体感することができる。
庭・土間・インナーバルコニーという「生活の余白」が点在するこの家。暮らし方の広がりを感じられるとともに、夫婦それぞれの時間、程よい距離を生み出す役割を担っている。
この土地ならではの開けた環境を暮らしに取り込みながら、外部と程よい距離感を保ち、住まい手に似合った安心できる住まいを実現できた。