敷地は周囲3方が隣家に囲まれ、
暮らしを外に開いていくにはどこか拠り所がない。
表の通りと距離を取りながら、
いかに外部の自然環境を
取り入れられるかが課題となった。
そこで、無理に通りに開くのではなく、
LDKと個室が中庭を囲む形態とすることで、
内向きに自分たちの世界をつくることを考えた。
中庭の壁の一面は縦格子とし、
プライバシーを保ちながらも、
光や風が抜けるよう考慮した。
そんな中庭を居室でコの字型に囲み、
空間を緩く区切ることによって、
家のどこにいても中庭を通して
光と風を感じることができ、
家族それぞれが思い思いの場所で
静かに過ごせる居場所をつくった。
LDK、寝室、子供室等の居室の天井高は低く抑え、
重心の低い落ち着いた空間としているほか、
中庭に面した大きな窓からの
開放的な光を享受しながらも、
落ち着きのある「翳」があることも大切にしている。
室内に明暗のグラデーションがあることは
暮らしの奥行きを生み出している。
クライアントはプランニング、仕上の選定、照明計画、
デザインに関わる一切を私たちに任せてくださった。
多様な素材使いも、些細なデティールも、
多くを語らずとも全面的に任せて頂くからこそ成し得た、
即断即決の感性の集積である。
のびのびと力を発揮させていただいた
クライアントには感謝しかない。